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日々響く日々

シンジ君とサザエちゃん2

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シンジ君とサザエちゃん2

夏休み前、すっかり女になったサザエ。
まあ何があったかは一目瞭然なんですが。

ただすっかり痩せてしまったのが心配だった。
ごはんもろくに食べない。

食べ物を本当においしそうに食べていた
あのサザエがなつかしい。

でもそれ以上に心配だったのは、
見るからに陽性で明るかったサザエにどこか陰りがというか
なんかやつれたというか・・・。
どこか体壊してるんじゃないかと心配になってきた。

で、夏休み。

この夏もどうせシンジ君に夢中なんだろうと思っていた。

まあSNSの投稿を見る限り、
ケーキの学校に行ってるようで楽しそうだとは思ったけれど
じつは夏休みたいへんだったらしい。

夏休み前、サザエは大学が提携している日本語学校への留学を決めていた。
競争率のちゃいなで大学院をめざすより
日本の大学院の方が入りやすいという理由で留学する学生も少なくない。

で、サザエの場合、日本に行って大学院の試験を受けても受かる気がしないから
研究室に直接入れてもらう方法を選ぼうとした。
そのそも研究分野も何もないサザエが研究室に入れてもらえるわけがない。
そのことも説明したけれど、
わたしに怒られたと彼氏にあとで泣きついただけ。

彼氏にももともと留学願望がある。
ただ二人は一年先輩と後輩。同じ時期には行けない。
結局サザエが先に行くことになってしまう。
そのことでサザエが留学を迷い始めた。

で、夏休み明けにはサザエはケーキ屋になりたいとか言い出した。

夏休み前からサザエの留学は決まっていたし、
そのための準備もほとんど終わっていた。

なのに突然
「留学やめます・・・」

最初理由は、いっしょに行くはずだった元親友が
やめたからだと言っていた。

一人だから怖いと。

でもその親友とはとっくに関係は破綻していたはず。
元親友はもともと親が反対していたが、
サザエの場合むしろ親が後押ししていた。

どうもおかしい。

そもそもサザエはこんなに心配症な性格ではなかった。
「だーいじょーぶですよ」といつも明るく脳天気に言っていたし
あまり深く物事を考えるタイプでもない。

それが見るからに不安いっぱいの顔で
後ろ向きな決断をしようとしている。

「何があった?」と聞くと
サザエが号泣。

友達もみんな離れていったのに
どうして先生は変わらず優しいのか?と聞かれた。

それはまあ「先生」だから。

はっきりいって友達ならくっそおもしろくないだろう。
彼氏に夢中で付き合いも悪いわ
メッセージの返事は来ないわじゃ。
あいつは変わったと離れていくともだちの気持ちはわかる。
ましてや元親友なんて自分の彼氏と電話してるだけで
サザエにヤキモチやかれて見えないところで連絡とってたのに
そのサザエが彼氏ができた途端、
あれだけ彼氏にべったりじゃそりゃ腹立つだろう。

しかしあれだけ仲良かったルームメイトたちとの関係も
ずいぶん変わったものだ。

でも変わったのはそれだけじゃない。

「今年、何もかも変わる。こわい」
そう言うサザエ。

友達との関係、日本への留学、見えない未来・・・

そして何より彼氏のこと。

夏休みも二人は会っていたらしい。

そもそも家庭が居心地のいい場所ではないシンジ君は
辛くなってよくサザエが合宿しているケーキの学校まで会いに行ったらしい。

サザエがケーキの勉強をしている間は
近くで日本語の勉強をしていたシンジ君。

シンジ君にとってサザエは精神安定剤のようなものだった。

家庭に居場所がないシンジ君にとってただ唯一サザエが居場所。

そしてシンジ君はサザエとの未来を考え始めた。

で、夏休み、サザエの家で過ごしたシンジ君。

サザエのお母さんは明るい人で、話を聞く限りおもしろいオカン。
サザエには、ほかに
ごっつくて強面だけど優しくていつもサザエの味方のオトン、
それに弟がひとりいる。

サザエの家族は本当に仲がよく、家族一致団結といった感じ。
シンジ君とは真逆の環境。
だからこそ、シンジ君はサザエの家族に憧れて
サザエさん一家の一員になりたかったんだと思う。

でも二人はあまりにも環境が違いすぎた。

都会生まれで金銭的にも余裕があるサザエの
田舎で余裕のないシンジ君の家。

そしていつも家族行動のサザエのうちで
朝早くから家の手伝い、みんなでごはんが当たり前の生活は
朝早く起きれない夜型のシンジ君には辛いものだったらしい。

それでもシンジ君なりにサザエさん一家に気に入られようと
がんばっていたらしい。

が、あるとき、シンジ君のお母さんから電話。
留学したいシンジ君とそれを反対するお母さんとの間でいつもの口論となり
サザエのお母さんの前でシンジ君は大声をあげて怒ったらしい。

これにはこれまでのシンジ君の育った環境やら
親との関係やらがベースにあるのだけれど
こちらではとにかく親に対して大声で怒鳴るなんてあるまじきこと。
サザエのお母さんはその場ではシンジ君をなだめて優しくしたらしいが、
後になり、あんな男はだめだとサザエにメッセージを送ってきた。

それを偶然シンジ君が見てしまう。

その内容にショックを受けたシンジ君。

ただでさえ自己肯定感が低いのに
自分を否定されたということにかなりのショックを受けてしまった。

サザエとの未来さえ壊れてしまったと嘆く。

恋人や配偶者の親に否定されるなんてよくあることだと
私は思ったりするのだけれど、
とにかく繊細なシンジ君には耐え難いことだったらしい。

ましてや自分の前ではすごく優しくしてくれたのに
裏では悪く言っていたなんて!と激しく動揺している。

これもよくあることだし、
わたしだって経験している。
嫁姑にはありがちだし、これも世の常人の常だろう。

でもそうは思えないのがシンジ君の性格。

シンジ君は恐ろしく繊細で危うく見える。

そんな彼に対してサザエはすっかりお母さんのようになっていた。
私があれほど「母親になるな」と言ったにも関わらず。

はっきりいってシンジ君の方が日本語はできる。
それなのに急に予定の課題より宿題が増えて動揺するシンジ君の代わりに
サザエが代わりに宿題の論文を書いてやったり
もともと弟がいるせいか、やたらと甲斐甲斐しく世話を焼く。
そして「彼は私がいなきゃダメなんです」状態にまでなっていった。

「シンジ君はそこまでダメな子じゃないよ」と私が言っても
とにかくサザエは彼を心配していた。

夏休み、サザエのお母さんに否定されたと嘆くシンジ君は
さらに新しい傷を腕に増やした。

そして家族に反対されていることもあり
シンジ君は自分が留学できないのに
サザエはじゃぱんに行くのかということを言い始めたという。
見捨てないでくれと。

サザエもまた未来が見えなくなった。
シンジ君を置いてまでじゃぱんに行きたいわけじゃない。
自分の母親のせいでシンジ君が苦しんでいる。
どうしたらいいのかわからない。
何もかも不安だ。
それが留学をやめるといった一番の理由だ。

そんなサザエに私は声を大にして言った。

「彼氏がいてもいなくても選択したって道を選べ!」

サザエの留学はもともとシンジ君のためではなかったはず。
目的がないとか言っていたけど、別にそれでもいいじゃないか!
もともと楽しいことが好きで、好奇心が旺盛で、
新しい発見をして目をキラキラさせていたのがサザエで、
そんなところにシンジ君も惹かれたはず。

だいたい一人じゃ留学したくないって
サザエに限ったことじゃないけど、なんか不思議。
じゃぱんだと留学って女の子でも平気で一人で行くイメージ。
でもこっちは女の子が一人で留学なんてとんでもない!みたいのがある。
必ずともだちといっしょ。
じゃぱんですよ?治安が悪いところにいくわけじゃないのに。

幸い、女の子一人は危ないと留学させてもらえなかった委員長とちがい
サザエのお父さんは一人でも行ってこいと背中を押すタイプ。

「もうさ、シンジのことは置いといて、楽しいこと考えてごらんよ」

そう言ったら、サザエは
「じつはじゃぱんのケーキに興味がある」と言い出した。

ケーキ学校の先生がじゃぱんのケーキは
ちゃいなとは全然ちがうと言ったそうだ。
どんなケーキか食べてみたいし、
名前忘れたけど、じゃぱんに憧れの女性パティシエ?もいるらしい。
彼女の店にも行きたいという。

そういう話をしているサザエの顔はだんだん明るくなってきた。

そしてわたしも調べたが、語学学校のある辺りには
ケーキ教室もたくさんある。
しかもサザエが夏休み通ったケーキ学校より安い。
どうせならアルバイトもケーキ屋にすればいいんじゃないかと提案した。
ケーキ学校の免状もあるし、裏方で働けるところもあるかもしれない。
じゃぱんで修行してこっち帰ってきてケーキ屋開けばいいじゃん。
こっちじゃ高いオーブンや抹茶もじゃぱんで安く仕入れて売れば金になるぜ
みたいな話をしてたら、だんだんサザエ本来の輝きが蘇ってきた。

そしてサザエは一度取り下げた留学希望をさらに撤回。
一週間後、サザエのじゃぱん生活はスタートする。

さらにシンジ君。
彼は去年サザエが落ちた某大学の留学の面接で見事合格。
来年四月からじゃぱんでの生活がスタートする。

いきなり面接があるっていうんで
追試の時間を遅らせてシンジ君の面接練習につきあった。

日本語につまると、横にいるサザエにすぐすがるシンジ。
シンジの横でいちいち口を挟むサザエ。
まるでお受験面接のでしゃばりママみたいで
「ちょっと!おかあさん!だまって!」と言って黙らせた。

去年と比べて今回はハイレベルな戦いだった。
なにせ留学希望の三人は二年生のトップスリーだったから。
でもほかの二人より一歩劣ると考えたもうひとりは直前で辞退。
ずば抜けてトップの子とシンジ君の一騎打ちとなった。

正直、トップの子が有利と思われたが、
本番になって緊張のあまりトップの子が泣き出してしまい失敗。

シンジ君が選ばれて、本人もサザエも大喜びだったが、
このトップの子がかわいそうで、この日、元旦那が
彼女をわたしの部屋に連れてきた。

いっしょに酒を飲んで励ました。
今回の結果がこれまでの努力の結果なんかではない、
努力が実るのはまだこのあとの未来だと。

彼女もじつはサザエのクラスメイトと付き合っている。
この男はとにかくモテたい、彼女がほしいという男だったが
自分磨きに数々の失敗をしていた上に
モテ活動に力入れすぎて日本語の成績も暴落したアホである。
でも彼女と付き合ってから彼は変わった。
今では日本語レベルもサザエより高い。

こちらのカップルも来年二人でじゃぱんに行き、
ともに大学院をめざすそうだ。

どちらもクラスで浮いているってのが共通点の
変わり者の二人だったけど
こちらのカップルはずいぶんいいように
変わったと思う。

彼女がそれほど恋に溺れずトップの座を守り続けたってのが大きい。
でもそんな彼女が初めて大きな挫折を味わったとき、
あのアホが包容力を発揮できるほど成長したってのも大きい。

お互い成長できる恋愛をサザエにもしてほしい。

ところが夏休み後は二人共ダメになる寸前だった。

でも今は、二人共、付き合う前からの目標だった
じゃぱん留学の夢を実現させた。

だがしかし!

シンジ君の闇は深い。

昨夜もたいへんだったんですよ・・・

つづく










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コメント

1. いかにも

うーん、いかにもチャイナの学生っぽいですね。目標がコロコロ変わるとことか。これは私も気になり、以前に作文に書かせたことがあるんです。
読んでて、これまで見てきた学生たちの集大成のような印象を持ちました。

Re:いかにも

> うーん、いかにもチャイナの学生っぽいですね。目標がコロコロ変わるとことか。これは私も気になり、以前に作文に書かせたことがあるんです。

目標たしかにみんなコロコロ変わりますね。
作文って、将来の目標についてですか?
わたしの作文の授業では小学生の作文以下のものばかりでしたよwww

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倫子
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