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日々響く日々

シンジ君とサザエちゃん6(完結編)

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シンジ君とサザエちゃん6(完結編)

夕方、シンジ君から電話。
これからサザエと二人で来るという。

今晩家に帰るというサザエ。
微妙な空気の二人。

おもむろにサザエが口を開いた。
「先生、たくさん私たちのことで助けてくれたのに
ごめんなさい。私たちは別れました」

隣で死にそうな顔をしているシンジ君。

「まあ、二人で決めたんならそれでいいよ」

そう言って、わたしはサザエに
かっぱ橋道具街のサイトや
谷中、根津、千駄木、深川など
個人的に好きな東京下町の画像を見せたりしていた。

サザエは10日にじゃぱんに着くという。
ちょうどその時期はかっぱ橋道具まつりがやってる。
お菓子の道具を見たり、食品サンプルを見たり、
お祭りをみたりすれば気分も晴れるだろう。

問題は死にそうになってるシンジ君である。

サザエが、帰り支度をするというので先に帰ったあと、
シンジ君は一人残っていつもの独白。

飯時になっても話はつづく。
いつもの話。
サザエのお母さんの評価。
話が長いし、ごはんはいらないというので
一人でつまみを作り、ビールを飲みながら聞いていた。

これが二次元ならば、ヤンデレ美青年の闇落ちっぷりは
いい酒の肴になるんだが……。

「夏休み、サザエの家になんて行かなきゃよかった・・・。
そうすればお母さんの評価に苦しむことはなかった・・・」

そう言うシンジ君に私は言った。

「シンジ君、日本にはこのような言葉がある。
『これでいいのだ!』没法子!


大陸育ちの赤塚不二夫先生が大陸でよく聞いた言葉。
ここから生まれた「これでいいのだ!」

大陸から来た言葉をじゃぱん経由で大陸人のシンジ君に伝えたわけだが、
大陸気質のおおらかさが微塵もないシンジ君の心には何も響かない。

「やって後悔するよりもやらないで後悔するほうが
 どうしようもない後悔だ」

まあでもアニメの系統が違いますから・・・。
エヴァのシンジ君ですから
こんなこと言っても無意味。

未来のことを考えると不安でたまらないシンジ君、
未来の約束がほしかったサザエ。

まあどうしようもない、しかたない。

「先生が一番安心できる場所はどこですか?」

シンジ君はすがるような目で聞いていくる。

「ぼくは、どこにいてもこわい。
寝るときも、いつでも、安心できない。
ただ彼女といるときだけが安心できた。
彼女との未来に希望があった。
なのにお母さんの評価ですべてが絶望に変わった。
このことがあってから彼女はいつも喧嘩する。
毎日毎日喧嘩。ぼくはとてもつかれた。
逃げたい、逃げたい、今は考えたくない」

「まあ逃げるのも一つの方法。
逃げてもいいよ。時間がある限り。
でも、逃げちゃダメなときもある。
今しかないって時もある。
彼女はもう帰る。もう会えなくなる。
逃げてていいのか? 後悔だけはするなよ」

そう、サザエは彼の連絡先を消去している。
お互いなのかしらんけど、シンジ君も自分からは
もう連絡できないと言った。

それならもうこれが本当に最後の機会なんだろう。

「試験に合格したのも、某大学の留学がかなったのも
すべて彼女のおかげ。彼女がいたから」

「それを伝えれば?」

「いいえ……いいえ……」

その間にもサザエからわたしにメッセージ。

「シンジ君はだいじょうぶですか?」
「彼をよろしくおねがいします」
「実はまだ待っています」
「彼が大好きです」

それでもシンジ君が自分といれば
お母さんの評価に苦しむからと別れを選んだサザエ。
まあ本人も毎回毎回お母さんのことしつこく言われて疲れたんだろうけど。

「先生、ちゃいなにはこんな言葉があります。
高到不能再高就是下破路
(高みに達すればそれ以上高くはなれない、あとは坂道下るだけ)
彼女といて、最高の幸せを味わった。
だからあとは落ちていくだけだと、僕はずっとこわかった」

「僕は多くのことを考える、人にはつまらないこと、
でも自分はそうは思えない、苦しい、病気かもしれない」

「病気じゃないよ、性格だ。
誰でも未来のことやわからないことは不安でたまらない。
悩みは同じ。大きいか小さいかの違い」

そして私は提案。

「その心にためこんでいることを書いてみたら?」

これはわたしがやってきたこと。

「高校時代、ともだちに勧められて書きました。
三枚ぐらいかいたけど、つまらない内容、答えがない」

「三枚ぐらいじゃ足りないんだよ!
自問自答しながら書いたか?すべて吐き出したか?」

わたしなんて何千枚と書いたぞ。

まあでもこれも向き不向きがあるから仕方ない。

そこで次の提案。

ジグゾーパズル。

「真っ白なのもあるからひたすら無心でやるってどう?」

これもピンとこない様子。

次の提案。

「動作で脳をだますんだよ!
つらいときこそ、スキップしたり、
楽しい時にやっている体の動きをあえてする。
すると脳がだまされて、今は楽しいんだと解釈し、心の状態が変わる」

これはアラン教授の幸福論を参考にした。

まあでもわたしも自分の短気があらゆる方法で
治らなかったように、
ダメな時はダメ。それもよくわかる。
心が乱れてる時こそ瞑想が必要。
わかっちゃいるけど
起き上がることさえできないときもある。

だけどこれだけは言える。

「時間がすべてを変える」

「わたしも夏休み前は非常に辛かった。
離婚のことで本当に悩んだ。いろんなこと後悔した。
でも今はあの時よりずっとマシ。
同じ状態のままではない」

少し落ち着いた様子のシンジ君は
「彼女に会ってきます」と出ていこうとしていた。

「でも、彼女になんて言うべきですか……」

「言うべきことじゃなくて言いたいことはないのか」

「どうしよう……どうしたら……」

そしてまた過去の回想パート。

もう回想はええんじゃ!

するとドアがノックされて
サザエが再び現れた。

連休でルームメイトも誰もいない部屋に
一人でいると気がおかしくなりそうってことで
戻ってきたらしい。

気まずい空気。

帰ろうとするシンジ君。

おい!今逃げるか!

とりあえずサザエを中に入れる。

最近夜は寒い。

気まずそうにそれぞれ携帯をいじる二人。

そのうちシンジ君がいつもの甘い囁きボイスで
「先輩……」と声をかけた。

「今までありがとう……」

「お礼はいらない」

沈黙……

そして帰るというサザエ、
一緒に外に出るシンジ君。

窓から二人の様子を見送った。

離れて歩く二人、
そのうちシンジ君が彼女に近づき腰に手をまわす。

また離れる二人。

さらに歩くと、
今度はシンジ君がサザエの手をつかみ
強引に引っ張って道から逸れた。

見切れた……

見えねー。

その夜、帰るかどうかは
列車の席のキャンセルが出るかどうかで決めると言っていたサザエ。
どちらにしても連絡すると言っていたが
連絡がこない。

これはまた不毛のホテルコースか……
と思ったら、
サザエから連絡。

帰るのは明日にしたようだ。

「今シンジ君といっしょ?」

「いえ」

「彼はまだ逃げている」

「そして」

「別れた」

「そうか、没法子」

「辛いか?」

「是的,但是没法子(はい、でもしかたない)」

没法子には「これでいいのだ」が含まれる。

「サザエはがんばった」

「だから」

「これでいいのだ」

同じ画像をサザエにも送った。

「はい、わかりました」

そしてサザエは私からもらった500円玉に
力をもらったので保存したいと言っている。

じゃぱん現金はちゃいなで用意して持っていくと言ってたけど、
小銭がなきゃ困る場面もあるかと思い、
自販機で喉渇いたら飲み物買いなと渡した500円玉だった。

人の好意を素直に受け取って愛で自分を包める人は
自己肯定感が健全にあるんだろう。
サザエはだいじょうぶ。

シンジ君はサザエが去ったあとも苦しみ続けるんだろうなぁ。

日本語能力試験2級ほぼ満点、日本語四級試験は
三年ながら四年生も抜いてトップの成績、
某大学の一人だけ留学枠も合格、
背も高く容姿にも恵まれ、彼女には深く愛されていた。

でも自己否定の気持ちが強くて苦しみ続けている。

こればかりはなぁ。

「先生が一番安心できる場所はどこですか?」

この質問に
「心の状態がよければどこにいたって安心できる。
でも不安が先にあるならばどこにいたって安心できない」
と答えたけれど
そもそも安心できる心の状態になれれば悩むこともない。
考え方を変えることができればループに苦しむことはない。

なんかほんとカウンセラーとか精神科医ってすごいなぁ。

解決できないという出口がないと相手が信じている限り
何を言わせても何を言っても仕方ない。

話してもスッキリしないようだし、
むしろ繰り返すことで
思考回路のパターンが定着しそうだし
結局自分にはもう無理だとあきらめたサザエの気持ちもわかる。
そしてシンジ君の高校時代の彼女も同じ理由で去ったようだ。

この先もたぶん同じことが繰り返されるのかもしれない。
本人が変わらない限り。

それでも時間は少しずつ、何かを変えていくと思う。

ひとまずサザエが去ったあとはまた精神状態悪化させるだろうから
N1満点合格を目指してもらおうか。

高到不能再高就是下破路
(高みに達すればそれ以上高くはなれない、あとは下に下るだけ)

だけどさ、逆もまた然りで
どん底まで落ちて落ちきったら
あとは登り坂と光が見えてくるかもしれない。

アラブ人も言っている。
「明けない夜はない」

こんな言葉もあったなぁ。
「夜明け前が一番暗い」

今はボロボロに傷ついている二人だけれど
明るい未来に向かって歩きだしたと
信じているし願っている。

追記

そして今日も眠れないシンジ君に
わたしのしょーもないアドバイス。














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